昨年のお話になりますが、初めての緊急事態宣言から、1日のほとんどを自宅や仕事場で過ごす事になり、十分なテストも行くことができませんでした。

新作の予定もありましたが、それも断念せざるを得ない状況になりました。

今年は、昨年ほどではありませんが、それでも今まで通りとはいかず、未だに悶々としています。

それもあって、ひとりで釣行することも増えてボートの上げ下ろし、バッテリーの積み込みなど体力の衰えも感じましたね。

しかし、そうは言っても家でじっとしている訳にもいかないので、何か現状で出来ることを模索して2年近く経過しましたが、ハンドメイドの魅力について考えられる良い機会にもなりました。

やはり、それは機械では出来ない手仕事なのではないかな?ということです。

機械が作ったように精度の高いものを、ハンドメイドで作れることもひとつの技術として素晴らしいことであり、手作業で作った温かみのあるオンリーワンのものも魅力であると思っています。

色々な楽しみ方がある中で私が作りたいものは、日本人らしい細かい手仕事が入ったもので、なおかつ「ルアー」であるということ。 眺めて楽しんでいただけるのも一つの喜びであると同時に、「ルアー」は、これを持ってあのフィールドで、このシチュエーションやタイミングで使いたくなるものだと思っています。

製作者が思い描くストーリーを、各地のアングラーが私とはまた違う解釈で受け継いでいただくものだと思っています。

愛知県で生まれたものが、東北や四国、関東、九州など全くの別のフィールドでその土地土地の方が、ここで使いたい、そう思えるものが「ルアー」だといいなと思ってます。

ただ単に、木を削って魚を釣って、使いやすくてよく釣れますよ、どうですか?ではなくて、メーカーとして提唱するスタイルや物語が私たちが楽しむハンドメイドルアーの魅力であり、それがルアービルダーにしか出来ないものかと思っています。

一昨年から日本に住む淡水魚のエサ釣りを少し始めて、気がつく事がたくさんありました。

それをまた自分の作品を通して、お伝え出来ればと思ってます。

そこで、新しい試みのひとつとして、思い出のフィールドで使いたかったルアーのサンプルを作りました。

「ブルーギル」

多分、僕らの世代ではフナよりも先に釣ったことがあるくらい誰もが釣った思い出の魚じゃないかな?と思います。

雄、雌、それぞれ色が違っていたり、産卵時期にはさらに独特なサンフィッシュらしい色味が出てきます。地域により大きさや全体的な色も違い、ブラックバス釣りには切っても切れない縁のある魚だと思います。

背中のひれがするどく尖っているのもあり、あと簡単に釣れるという理由もあって毛嫌いされる方が多いかもしれませんね。

外来魚ではありますが、もはや日本に定着してしまった以上、獰猛に餌に食らいつく姿は、小さな子供にも簡単に釣りの楽しさを教えてくれる魚なのではと思います。

私が小さな頃に通った思い出深い琵琶湖、湖北のブルーギルを、アレンジを加えながら製作しました。

沢山のサンプルを作りながらこの2年間で作りましたが、ようやく納得出来る様になった時に、この2年は試行錯誤と練習だったのかなと後から思いましたね。

掘り込みを入れる力加減、刃物の研ぎ方をおぼえて、エラの彫り込みや研磨、ウロコがひとつひとつ、綺麗な形である事がこのルアーが美しく、艶かしく見える大切なところかもしれません。

塗装に関しても、塗装の吹き方やその後の下処理、最終的なトップコートの回数など、ただ彫り込みを入れたというだけで、沢山の工程を今一度このルアー用に勉強しないといけないんだなぁと、作り始めて気がついたことでもあります。

自身でひとつひとつ掘り込む事でどこか温かみを感じる木のルアーが完成すると思います。

リアルさの追求ではなくて、抽象的な形のルアーに施した彫刻は、私たちの釣りのスタイルにまたひとつプラスの楽しみを見出してくれるかと考えてます。

本物らしくというのではなくて、本来のカラーリングや目玉、作り続けてきたものにもうひとつユニークな彫刻という要素を足しました。

ぜひ皆様のフィールドに届けばと思います。

作業的にも沢山は作れないのですが、数がそれなりに作れるように作業効率や時間、色々なことも同時に考えました。少しづつですが、どのルアーもリリース出来たらと考えてます。

今回の新たな試みは、ひとつではなくて多くの事を勉強させてくれるんだと感じましたね。

釣りという遊びに使うルアーなのですが、釣りをやらない人が見ても興味を示してくれる方がみえれば嬉しいですね。

完成した際には、何卒よろしくお願い申し上げます。